Posted by on 2018年10月26日 in 風の心
平成30年11月号 風の心

淡交が、この10月で通巻九百号を迎えた。敗戦後の昭和22年4月から、70年以上休むことなく刊行され、お茶の情報を発信し続けてきたこの歴史は、非常に重い。今号の中から、心に残った言葉をまとめてみる。

印刷もままならない戦後、混乱し退廃した道義、乱れた秩序を、茶道という精神文化の復興によって正し、日本再建、民主日本確立を目指した淡々斎宗匠。それをお助けになっておられた鵬雲斎大宗匠。創刊号の内容を拝読すると、それぞれが淡交にかけた思いは熱く、立ち直ろうとする日本国と同じく、強い志で始まったように感じる。

また、当時国学院大学教授であった桑田忠親先生は、この創刊号の中で、

「狭い茶室に乏しきを分け、主客共に清き礼と深き喜びを味わい楽しむ茶の湯の原理にこそ、敗戦日本を救う唯一の鍵があると信ずる」
「お茶は金持ちの独占物ではない。茶室、茶器は何処にでもある。茶人は何処にでもいる。ただ、此等を創造し、活用し、お茶を飲む時の立派な精神で常に生活して、人生を有意義に幸福にせる道を実地に指導することが大切であろう。道義日本を建設するものは茶道である。」

と述べている。まさに茶道の意義を言い当てている先生の言葉は、明快で分かりやすいだけではなく、今の時代にも当てはまる重要な内容である。日ごろ先生のご著書に感銘している者としては、貴重な文面と出会えたことに、感謝するばかりである。

第二号では、清香院様の

「国民一人一人の肝にじっくり和の精神が滲み通ってさえいたなら、引揚者や罹災者の援護はもちろん、供出の問題も、闇物価の悩みも、そしてストライキもすべてが円満に解決されるでしょうし、或いは今度のような不幸な戦争さえ避けられ、あらゆる日本の悲劇が生まれなかったかも知れません。この和の精神をしっかり把握することこそ、日本再建への道であり世界平和の礎とも申せましょう。」

というお言葉から、当時の日本の様子を実感すると共に、和の心をどれだけ強く求めておられたか、またその必要がどれだけあったか、窺い知ることが出来る。

昭和17年12月号、まだ茶道月報時代の文面に次のようなものがある。

茶道問答
問 朝顔の茶事記事中に「ロクニイナヲル」とありますがどんな意味でございますか。
答 「ロクニ」と云うのは、漢字で書くと「直に」であります。「直に」は「正直」の直で、素直に真直ぐなことです。この正直さを失ったものが、もとの素直に返るのが「ロクニイナホル」です。後世の言葉で「ロクデナシ」と云われる「ロク」がこの場合の「ロク」です。   (西堀)

西堀一三先生のお答えかと拝察する。開戦後一年経過した頃の刊行かと、茶色いページをめくる度に感慨深い。

又玅斎宗匠と圓能斎宗匠が、明治41年10月にスタートした、茶道界初の定期刊行物、「今日庵月報」。その後大正11年に「茶道月報」となり、これは昭和19年6月に休刊を余儀なくされるまで続く。その後、「淡交」が生まれるのである。
古の時に想いを馳せ、そのお言葉から学び、考え、創り出す・・・これは最も重要な、道の修行の一つではないだろうか。

平成30年10月18日 畑中香名子