Posted by on 2018年11月23日 in 風の心
平成30年12月号 風の心

大宗匠マジックという言葉を、最近よく使う。鵬雲斎千玄室大宗匠は、御歳95歳。お身体の自己管理に気を使われながらも、今なお世界各国へ出向かれ、次々と行事をこなし、人々に平和への想いを伝えておられる。

この度43人で参加した鹿児島和合の茶会にて、その深き言葉の重みを感じながら、再び大宗匠の貴重なメッセージを拝聴する機会を得た。400人近い人々が、身を乗り出して聞き入り、その言霊に胸を打たれ感動する、大宗匠マジック。大宗匠が作る光り輝く渦の中で、皆大宗匠と共に回りだし、一つになるのである。

11月17日、早朝の飛行機で鹿児島入り。先ずは京セラホテルで南国の幸、点心を頂く。後に13階の眺めを楽しみながら、奄美大島支所主幹の薄茶席を堪能。螺鈿の棗はキラキラと輝きながら、青い青い海の中へ心を旅させてくれる。珊瑚を模した南鐐蓋置や白薩摩の水指、大島紬の柄を絵付した茶碗、組子透かし入り干菓子盆など、どれも南の島らしい取り合わせに気持ちがゆったりする。床は大宗匠筆「和以為貴」。茶杓は同じく「養心」。奄美の姿勢を窺がえる言葉だった。
続いて鹿児島支部の濃茶席。大宗匠とご一緒したこの席、珍しい柚子の香合が飾られ、薩摩焼水滴茶入には薩摩間道が沿って、屋久杉の風炉先も存在感を示し、お菓子は明石屋の菊寿を美味しく頂いた。

式典では、大宗匠の一碗を御点てになるお姿を拝見。いつものように一時間ご起立のまま話される講演会、そして薩摩琵琶の音が響く懇親会と、盛りだくさんに終わった。

 「お茶は、差別・区別があってはならない。誰にでも、まあどうぞ一服召し上がれ、ではお先にと言葉をかける。」

 「茶碗をちょっと回して正面をよける謙虚さは、半歩下がること。半歩下がるとぶつからない。平和とは和やかさ、和し合うこと、調和することである。」

 「夢があるなら、日本人であるという哲学をもって、この一碗で明日を見なさい。」

 「井伊掃部頭直弼の一期一会。この時は今しかない、チャンスを逃すな。その人と共にその時一体になる、主客同一です。」

 「皆さんにはお茶がある。笑顔で一碗のお茶を。人間同士の温かみを感じ合うことが、人間にとって一番大切な生き方です。」

熱き思いが溢れ出るお言葉の数々。皆が己を反省し、半歩下がらねばならないと感じた。皆が勇気をもらい、前を向いて行こうと思った。皆がお茶をやっていて良かったと、人間同士の温かみを感じ合う瞬間だった。
親しく写真を撮らせて頂きながら、笑顔で大宗匠と交流できる贅沢なひと時、そのマジックの輪の中に皆がいられたのである。

2日目は、島津家鶴嶺神社にて献茶、その後たまて箱号で指宿へ向かった。西郷隆盛の資料館「西郷どん館」や、薩摩焼の歴史を学ぶ「薩摩伝承館」を見学。白水館の特別室「離宮」に宿泊し、砂むし温泉やイタリアンの夕食を満喫した。
3日目、黒薩摩長太郎窯、白薩摩南楓山を見学してお買い物。西郷が痛んだ体を湯治した鰻温泉では、地熱を利用して温めたゆで卵やサヤインゲン、サツマイモ等を頂きながら、ガイドさんの言葉に耳を傾けた。ぐるぐる流し素麺の昼食後、傷んだ屋久杉の利用を学び、最後に軽羹の明石屋にてお土産を手配、一同帰路に就いた。

地域の風土に触れ、良き食を楽しみ良き湯に入り、少し茶の湯の勉強あり、少し買い物あり、人との交わりに心癒される、そんな旅であったなら幸いです。ご参加の方々には、本当に有難うございました。

平成30年11月20日 畑中香名子