Posted by on 2019年02月27日 in 風の心
平成31年3月号 風の心

2月、研究会にお弟子さんたちがモデルとして参加した。科目は、大炉後炭と大炉絞り茶巾。江の島龍口寺では、寺の鐘の音とトンビの鳴き声、江ノ電の走る音が響く中、遠くの水平線に見守られて、とても良い研究会が行われた。

役員の先生方や会員の皆様のご希望で、研究会一年分の科目担当者が決まる。毎年幾つかの科目は、どなたからも希望が出ない。壺荘付花月、奥伝、大炉・・・一つ踏み込む学びが残る。特に何も言わない我々に、どうですかというお誘いがあると、仕事が重ならない限り、受けさせて頂くことにしている。相模支部では、4年に一度と言われている大炉を、喜んで勉強させて頂いた。メンバーは1月の末に決まり、2月初旬の当日に向けて、特別な動き合わせを一回。後は日ごろの稽古で対応した。

当日、先生は朝の挨拶で、「今日はみんなで、来て良かったと思える一日にしよう。教える人も教わる人も一緒に。」そうおっしゃられた。嬉しい一言に、皆が前向きにスタートした。
午前中の科目も素晴らしい動きで終了し、いよいよ午後の勉強が始まった。後炭は組み方からご指導が始まり、会話をしながらの亭主の細かい所作を、丁寧にご教授頂いた。いつも外から拝見していて、お弟子さんたちの主客の空気に温かさを感じ、茶事を思うことが多い。普段から稽古でも茶事を行っているせいか、やり取りが自然体でそこに穏やかさがある。確かに点前は一生懸命であるものの、先生の言葉の意味をくみ取ろうとする素直な必死さと、主客互いへの優しさに包まれていた。主も客も、その役に人となりが現れる。

当日の朝、絞り茶巾の亭主は、お茶の後に白湯をお勧めする勉強をしたらどうかと提案してくれた。業躰先生のご許可を頂き、舞台ではアドリブで行った。薄茶の後に白湯を勧めそれをおも合いで頂く場合の、会話の仕方、気遣いをご指導頂いたことは、誠に良い勉強だった。先生から頂くご注意を、飲み込んで気付き話す正客と、点前をしながらそれに対応する亭主の言葉。全体の空気を察しながら、物言わず動く末客。絞り茶巾という科目を行う数十分の間で、みるみる内にモデルのみんなが吸収し、成長しているのが本当に良く分かった。

服加減を聞くタイミングを聞き急がない、喉も通らぬうちに。吸いきりで、今だとばかりに移動しない、茶碗を置くところまでは終わっていないのだから。帛紗を付けるタイミングを、待ってましたと行わない。「今日庵」ですよ。今この時を一つ一つ、大切に受け入れていかないといけない。その積み重ねで時が流れて行くのだから。
ご立派な御着物ですね、と言いますか。雰囲気も良く、お似合いですねと言いますか。ご立派な茶入ですね、と言いますか。釉が綺麗に流れていますね、と言いますか。会話は繋がるもの、それは普段の生活と同じ事で、お茶だから違うということはないのです。自然に、本当に自然に繋がっていくから、居心地の良いひと時になる。こんな風に先生は、大切なことをたくさん教えて下さった。

貴重な一言一言から、24年前に京都で学生として教えて頂いた頃を思い出し、舞台をじっと見つめていた。この度の先生のご指導に深く深く感謝申し上げると共に、いつも出場して下さるお弟子さんたちにも感謝するばかり。此方はそれに負けないように、まだまだ精進を重ねねばならない。

平成31年2月20日  畑中香名子