Posted by on 2016年10月15日 in 風の心
平成28年11月号 風の心

9月の上旬に、待光庵研修旅行として、北海道の知床と釧路方面へ出かけた。総勢30名の団体で飛行機や貸切バスを利用して、その大自然や心温かい人々と触れ合い、釧路地区大会に於いては御家元の茶の湯の儀やご講話を賜って、有意義な3日間を過ごすことが出来た。

飛行機は始めに女満別空港に降りた。滑走路には雨が打ち付けていた。ほんの少し、台風の影響が残っている様子だった。空気が少し冷たい。頬に感じる風に、北へ来たのだと思った。

貸切バスの運転手さんもガイドさんも、北海道のイントネーションで話す。大きなアクションも無く物静かな感じで、それでも様々なお話をとても詳しくなさるガイドさんに、北の地方の、冒頓とした中にある深く優しい人柄を見た。広く長い長い道路の脇の畑が、水につかっている。木々は倒れたり折れたりしていて、初めての台風に襲われた、自然の強さに打ちのめされた姿が痛ましかった。

先ずはサロマ湖のサンゴ草を見に走った。このような赤い植物が湖畔一面に広がる、北海道の自然の不思議な姿に目を瞠った。次にオシンコシンの滝へ向かう。雨の影響で、いつもの倍以上の水量が恐ろしいほどの勢いで落ちてくる。ナイアガラの滝を思わせる光景だ。走行中あちこちに大小の滝を見ることが出来るのは、その豊かな地形であるが故。天候の都合で海に出る予定は中止となったが、知床資料館で美しい四季折々の映像を見学し、美味しいアイスクリームを食べてホテルへ向かった。知床第一ホテルのお部屋は十分に広く過ごしやすい上、お風呂は天下一品だった。ジャグジーやサウナから露天風呂まで八種類のお風呂に三回もつかり、海を眺めた。夕食には蟹、牡蠣、イクラ、お刺身・・・贅沢と思われる食材がふんだんに使われて、皆様満面の笑み。私個人的には、広く高い吹抜けのエントランスホールに設けられていたソファー付き図書館に感動。このような所で、一週間くらい本に囲まれて過ごせたら・・・夢のまた夢である。

次の朝、突然バスの前に現れた、野生のエゾ鹿の家族に見送られて、宿を後にした。ホテルの温かいお心遣いで、朝食はバスの中でおにぎりのお弁当を頂いた。一路釧路へ。途中霧の摩周湖は、晴れたブルーの美しい摩周湖として、ゆっくり拝見することが出来た。このようなことはその時の運命で、全く予測が不可能と聞き、皆で慌てて集合写真を撮った。途中コテージ風レストランでは昼食にポークソテーを頂き、赤ワインで乾杯。次いで摩周焼の窯元を訪ね、登り窯を拝見しながら作家の方よりお話を賜った。気候と付き合いながら、北海道ならではの釉薬を作って、その地らしい焼き物を手作りされている姿が印象的だった。電動で薪を割る機械を拝見したり、作品を求めたり、ひと時楽しく過ごすことが出来た。

阿寒湖畔では、淡々斎宗匠の絶筆を石碑にした場所へ、お参りに伺った。その頃の出来事へ心をタイムスリップさせながら、手を合わせて感謝した。今日有るのは、多くの先人のご努力あってこそ。旅行前まで宗匠のご功績を振り返る勉強をしてきたことが思い出された。

釧路に着くと、懇親会ではお家元御一行様のお姿を拝見し、会場を埋めた何百という参加者と共に、有意義な夕食の時を過ごした。大会では台子の前に構えたお家元のお点前に、みな息を呑んだ。美しく繊細な手先の動き、呼吸の整った間の取り方、湯水の音だけが会場に響く、心に染み入るお点前であった。終了後の余情残心極まる、その目線の行く先にただただ台子を見るお姿が、今でも忘れられない。茶席も各席素晴らしく、生活もままならない中台風の影響を乗り越えてお人をお迎えし、精一杯もてなして下さる様子が、自然に立ち向かう人間の強さを思わせた。有り難かった。

旅はいい。地形、空、空気、食、町、人・・・皆異なる地域で、普段考えもしないことに出会い、味わったことのない感動を頂く。このような機会を頂けるのもお茶のお陰様と、毎年そう思いながら帰って来る。また来年、良い旅、良い出会いを皆様と共に楽しみたいと思っている。

平成28年10月9日 畑中 香名子