Posted by on 2016年04月18日 in 風の心

(前号からの続き)

総領事公邸で行われた、在ホノルル日本総領事館並びに淡交会ハワイ協会共催のディナーレセプションで、ハワイの淡交会会員の方と友達になった。彼女の名前は恵子さん。アメリカ名はキャサリンさん。日系3世となるそうだ。彼女はおそらく60歳前後、170センチ位の体格で、お茶はまだ始めて2年位。しかし、長刀35年という長いキャリアに驚かされる。彼女の穏やかでゆったりとしたその雰囲気が、何とも優しい。遠慮がちに片言の日本語で話す姿、無言の内に相手の気持ちを読み取って感じる様子は、日本人以上の日本人である。

レセプションの際の談話の中で、わけあって折りたたみ式の杖を買わねばならないと言ったところ、明日案内すると言って下さり、次の日ハワイのドンキ・ホーテで無事手に入れることが出来た。また、彼女の車の中にあったお菓子が美味しく、続いてコストコへ行って、お土産として買うことができた。日本ではどちらのお店にも行ったことが無かった私は、アメリカでそのお店の体験をした。

その後のひと時を、彼女と喫茶店で語り合った。彼女は長刀を長く稽古している為か、お茶の先生から、「あなたの姿勢や点前は強い」と指摘される悩みを抱えていた。点前座に座った人が作り出す空気とは、その人そのものなので、それ以上でもなくそれ以下でもない。だからあなたのように優しい方は、そのままでいれば、最後はそれが自然に表れる筈と、話してみた。キャサリンさんの茶の湯の型を作る過程で、35年の長刀の空気が出てしまうのはやむを得ないけれども、初期の段階で具体的に所作を意識して、芯にある優しさを優先できれば、お茶と長刀で体の使い方を分けることが可能だと思ったからである。彼女に、「私は、帛紗を四方に捌くときに、恩師の先生、両親、姉弟、周りの全ての方々と、それぞれを想って捌いています。何かそんな風に、キャサリンさんならではの工夫を点前に取り入れてみてはいかがですか。」と伝えてみた。ハワイに生まれ育った日系の方が、日本文化に触れ、その良さを感じ取って自分のものにするご苦労や楽しみを伺うことで、私自身の思考も深まった。キャサリンさんの好きな長刀、茶道、禅、日本、それらを複合的に表現できるようになる頃には、彼女らしさのある茶の湯をされていることだろうと、将来を楽しく想像した。

 大宗匠、有吉元州知事、キャサリンさん、みな立場も年齢も環境も、全く異なる方々である。しかし、それぞれご自分の環境で分に従い役割を果たし、その人生の現場を、今の瞬間を、大切に歩んでおられる。そこには強固な信念と、心温かい優しさと、広く人を思う大きな器があった。まだ半分位しか歩んで来ていない私は、よくわかっていないのかもしれないが、長い人生を生き抜いて歳をとると、その激動の毎日が回想され、そこからしか感じ取れない何かを想うのではないか。もはや全てに感謝でき、一分一秒の重みが変わる中、貴重な時間を更に精一杯生きようと思うのではないか。それが人間なのかも知れない。

「随所に主と作る(ずいしょにしゅとなる)」・「宇宙心」

大倉邦彦が座右にしていたこの言葉が、ハワイの行事や人々との出会い、交流の中で、自分自身に降りかかってきた。自分の生きている場所や、行っている事、それを囲む環境、それらを振り返り反省する貴重な機会を頂いた。

今回のハワイは自由行動が多かった為、歩いて地理を把握、車で島を一周して各地を巡り、ホエールウオッチングで鯨を見て、博物館や王族宮殿でハワイの歴史を細かく学んだ。ダイヤモンドヘッドに登り美しい日の出を見て、美味しいものを食べ、パールハーバー見学では、近代の重要な歴史的現場から、ハワイ王国、アメリカ、日本、それぞれの関わって来た時間をもう一度見直し、新しく知ることができた。

近年忙しさが増し、ゆっくりする時間がもったいないと思っていたが、時に気持ちを切り替えて、思い切り遊びきる中で自然と入ってくるものを見つけるのも良いことだと、今痛感している。

平成28年3月13日

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