Posted by on 2024年03月29日 in 風の心
令和6年4月号 風の心

幼稚園の頃から、お茶の稽古に通ってくれていたSちゃん。小さな小さな女の子は、とっても可愛らしいふっくらした頬っぺたを真っ赤にして、にこっと笑顔で挨拶をしてくれる。お母様が用意された小さな赤い服紗をたたみ、先生の所作を真っ直ぐな瞳でじっと見つめる。まるで息を止めているかのように、集中して見るのである。本当に小さな掌で棗を持ち、器用に清めてゆくその姿は、小さいながら自然体の強さと美しさを感じる。時折気分転換に、幼稚園の体操教室で練習している柔軟体操を畳の上で披露。柔らかい身体のしなやかな動きをみると、まだ生まれてから数年の、人間の新しいこと!如何様にも形を変えることが出来ますと言わんばかり。

そんな彼女が小学校に入り、制服を着て帽子をかぶり、ランドセルを背負って稽古に来るようになった。少しだけ大人びた姿になると、発言もしっかりとしてきて、「そこはこうだよ。」なんて他の子に教えてあげられるように。しかし良く周りを見て、何となく相手の様子を把握しながら、今は言っていい時と判断するとお口を開く、慎重な面もある。初めての初釜はお運びしかできなかった彼女が、年々お客様の前で点前をすることができるようになっている。そんなおしゃまなSちゃんも小学校の中学年になり、放課後の勉強が多くなって、今年から暫くは長期のお休みの際に稽古にみえることとなった。

K君は今年六年生になる。小学校二年生の時から茶道を始めた。口数は少なく、何かを朗読したりするのは少し苦手。言葉に詰まってしまう。そんな彼が、だいぶ早い時期から、子供クラスの中で一番点前が上手なのは、興味があるからではないだろうか。先日、「大きくなったら何になりたい?」と聞くと、「・・・」無言。「何に一番興味がある?」と聞くと、「茶道。」と言う。

コロナで稽古が休みだった時は、練切のお菓子でアマビエを作ったり、点前を動画で取ってSNSにアップしたり、お母様と一緒に、楽しんで茶道を行う時間があった様子。彼は何も言わないけれど、そして語るのが苦手だけれど、しっかりとした点前を淡々と行うことが出来る。茶道に関して言えば、予測して行動できる力を持っている。

今年から中学生になるS君は、お父さんと一緒にみえた親子茶道教室のご縁で子供クラスに入門した。彼も二年生からだったように思う。そこから三年間くらいは、よくあまのじゃくのように会話をした。先生が何か言うと、その言葉を真似して追いかけるように言う。「はい、次は右手で・・・」と言えば「はい、次は左手で・・・」と繰り返す。何となくたたんだ服紗はいつもぐちゃぐちゃで、こうやってというと反対の事をする。怖いと思うせいか私にはあまりやらないのに、教える人によっては「いい加減にしなさい!」と言うことになるのだが、本人はけろっとして笑っている。当然点前はあまり出来なかった。それでも何故か、休まずに稽古に通ってくれるのである。

男の子は突然に変化するのか、昨年くらいから何だかやけに大人っぽくなって、服紗もきちんとたたみ、急に点前が上手になった。無駄な話しをしなくなり、「はい、次は右手で・・・」というと、すっと右手が出るので、「えっ?あれっ?何?」と拍子抜け。今はとても立派な点前をする。

今思えば、小さい頃そのやんちゃな時期でも、お母様からは、家でお茶をする機会に教えてくれたりするから驚いたとか、学校の自由研究で茶道を発表したりなど、我々の見えない所でしっかりと形になっていたように思う。

信じている。子供たちは、本当の事にしか反応しないし、面白いと思ったことをやるので、彼らの想いが一番信じられる。そしてその瞳の真っ直ぐな強さと、澄んだ清らかさに向き合うことが、好きだ。その時すぐに変わらなくてもいい、目に見えるところで成長がなくてもいい。心は自然と結ばれて、何かを求めるものではなく、ただそれだけでいいと思える彼らとの交わりに、日々心から感謝している。

令和6年3月24日 畑中香名子